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2008年1月31日 (木)

話題の「chamomile・Best・Audio」を聴きました

 

「とくダネ!」で、司会の小倉さんが「音がいいッ」と連呼したことで、一気に広まったCDなんですが、PS3に関心のある人はかないまるさんのHPで先に知っていた方もおられるでしょう。私も気にしていたんですが、小倉さんのおかげというか、あまりにヒットしてしまったので、初回販売時には購入できず、ちょっと遅れて購入できました。小倉さんがオーディオマニアなのは有名なことなんですが、その方が「音がいいッ」と連呼するディスクとはどんなものか。かないまるさんが作るディスクとはどんなものか。興味がありますよねぇ。ということでいろんな方がこのディスクは購入されたのではないかと思います。さて、皆さんの感想はいかがだったでしょうか。

 なぜ、こんな書き方をしたかというと・・・。このディスクの評価、もちろん「音楽・道楽」ですから、高音質ディスクとしての評価になるわけですが、さぁ、このディスクはいったいどう受け止められたんだろうかと、最初に聴いた瞬間に思ったからです。このディスクはあきらかにいわゆる高音質ディスクと聞こえ方が違う。「うわー、やられたなぁー」と思いました。「そうか、こうきたのか」と。

 いわゆる高音質ディスクでは、まずボーカルのクッキリさ、はっきりさが喜ばれます。さらに演奏される楽器の分解能だとか、リズムを刻むベースやドラムの低域の強さとか、ホーン楽器の鋭く伸びる高域の感じとか、あるい高域に華やかに抜けていく歌い手の声が目立つものです。そうしたものが鮮明であればあるほど、高音質とされる。しかし、このディスクにはそのどれもがない。藤田恵美さんのボーカルはセンターで主役をとっているものの、他の楽器たちはどちらかというと後ろに引っ込んでいて、「伴奏」に徹している。決して前に出てこず、目立つことがない。低音の強い楽器も、高音の伸びる楽器も出てこない。分解能が優れて目に見える感じもない。藤田恵美さんのボーカルも華やかさや輝きのあるクッキリさとは全く違う。落ち着いた声で、高域に伸びきるタイプの歌手ではない。だから、これは今まで聞き慣れた高音質系ディスクとはあきらかに違う。「違う」というよりは、ものすごく普通のディスクに聞こえるんじゃないかなぁ。もちろん、J-POPの下手なディスクよりはよっぽどいいけど、はてさて、何が驚くほどのことがあるのかと。いかがでしたか。小倉さんが「音がいいッ」て叫んだディスクの音は。小倉さんが大げさな分だけ、「え、こんなものか」と思われたのではないかと思ったりするのですよ。

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2008年1月27日 (日)

ちょっとだけニュース DS-8000がオークションに登場

 我が家でも現役続行中のDS-8000がヤフーオークションに出ているんですね。まぁ、普段はめったに出ないんです。DS-8000はダイヤトーンでありながら、ダイヤトーンらしくない。ダイヤトーンと言えばたいていの方は密閉型のカチッとした音、デザインをイメージされるんですが、DS-8000はフロントに大きなバスレフダクトが2つある。デザインもピアノブラックでもないし、スタジオモニターで見られたひとつ目の感じでもない。むしろ、ダイヤトーンらしさを捨てたというくらい、往年のというか、古いデザインがそのまま大きくなったというような感じです。でも、これがダイヤトーンの記念モデルあるということは今や誰も知らない・・・というくらい。

 HPの方でも書いていますが、私はこのDS-8000のダイヤトーンらしからぬ開放感というか、伸びの良さ、音楽の楽しさが気に入って導入にいたりました。密閉型は低音のピッチが確かによいけど、豊かさとか、スウィング感を出すのはちょっと大変。もちろん、バスレフは音を閉めるのが大変なわけですが、当時の私は楽しさを取りました。ともすると、表面的にサラサラと、数値を音に帰ったといわんばかりの鳴り方をする日本製スピーカーの中にあって、おおらかさや深さのある鳴り方が魅力的でした。しかも、これが実はチャンとダイヤトーン製で単に情感型のすビーカーとも違う。走り出したら止まらないJBLでも、沈み込んだらはい上がれないタンノイとも違う。その節度の良さ。バランスの良さが気に入りました。現在はJBLもタンノイもどんどんその節度を身につけて本当に大人のスピーカーになってますが、DS-8000は反対の道から上り詰めてきたスピーカーだと思うのです。惜しむらくは発売してすぐにダイヤトーンがスピーカー業界から身を引いたこと。日本製のスピーカーを選んだのはダイヤトーンというメーカーに対する信頼感もあったんですが、それが消えてしまったことだけが本当に予想外でした。

 なぜ、こんなことを書いているかというと、本当にこのスピーカーはちまたで人気があるのか、ないのかよくわからない存在なんですよね。使用している人の話もあまり聞かない、ネットでも見ない。中古やオークションを賑わすこともあまりない。私はとってもお気に入りだし、価格も発売当時から100万を切るセットでとってもお買い得だと思うんですけど、どうも話を聞かないんですよねぇ。それが海外輸入品と、最近ではダイヤトーンのリモデル発売を手がけるようになっているロビン企画さんからの出品という形で出てきました。何がうれしいといっても、そのロビン企画さんのコメントの評価が高いこと。もちろん、販売が目的ですから、悪く書くはずがないんですが、先も触れたようにダイヤトーンのリモデルを開始しているにもかかわらず、DS-8000には手をつけなくていいと書いていたりします。開発者の感性を信じて使うべき製品だと。うれしいじゃないですか。おお、そんなふうに感じてくれている人がいてくれるのかと、ついつい感動して、このコメントを何度も読み返したりするのです。こうして長く使ってくると、ダイヤトーンらしさというのも実によくわかります。このコメントにもありますが、「おおらか」と書いた一方で、丁寧にいろんな音をよく拾うし、敏感なモニター調の面もしっかりあるんですよね。硬くも柔らかくも鳴る。未だにユニットにへたりもないどころか、むしろどんどんなじんできて、ここ数年が本当によいという感じすらありますから。気がかりだったダイヤトーンも最近復活を果たしたこともうれしいニュースですしね。
 と、そんなこんなで感慨に浸る、我が家のニュースなのでした。ちなみに、オークションの終了はもうすぐ。今のところ価格はセットで13万円という、いやいや本当にビックリ。かなり大型なので誰でも買えるということはないですが、セッティングのゆとりのある方はどうかと。仲間がたくさんいてくれた方が楽しいんですよねぇ。

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2008年1月25日 (金)

寺島靖国さんの「メグ」にも行きました

 そうそう年末には、レクストさんと合わせて寺島靖国さんで有名なジャズ喫茶「メグ」にも足を伸ばしました。こちらは同じ東京でも吉祥寺。新宿を超えてさらに向こうに行くんですねぇ。地方在住者は山手線から離れると怖いんですよねぇ。山手線圏内なら必ず戻ってこれるという安心感があるんですが、そこから離れるともうどこに向かっているのかも自信がなくなります。向かったのはジャズ喫茶「メグ」。ジャズオーディオ界では超がつくほど有名なお店です。経営者が寺島靖国さんですからね。で、一度は行ってみたかったんですが、時間がないとなかなか吉祥寺まで向かうということができません。今年はようやくそのチャンスが訪れたという感じです。

 「メグ」なんですが実は地図らしい地図がないんです。ネットで探しましたが見あたりません。結局、住所からたどってネット上のマップサービスを利用して経路を確認しました。行ったのはレクストさんと同じ12月28日。平日のお昼です。吉祥寺はまったく始めて。高架橋の下の出口から出て、前の通りに沿って進みますが、目印らしい目印がないので、ちょっとわかりにくかったです。「メグ」のある小道に入る角にあるビルの名前が頼りなんですが、ビルの名前が大きな看板ででいる分けでもなく、最初はちょっと行きすぎてしまいました。戻って、その小道を進むんですが、これまた「メグ」がわかりにくい。こちらも大きな看板があるわけではないんですね。実をいうと私は「メグ」がなんとなく地下にあるというイメージを持ってました。だから、なんとなく1階から下に向かうような入り口を捜してたみたいです。本当は2階になんですね。小道の入り口に戻ってよくよく見たらわかりました。「あ、階段昇るんだ」と。

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2008年1月19日 (土)

システム変更の波が訪れる・・・・

さて、今私は正直大いに悩んでいます。レクストさんのDACを我が家のシステムに入れるのはどうかと。

これまでの通り、レクストでの試聴の感覚は、私の求めている音の方向性に非常に近いことを確かに感じます。だから、その意味で不満はありません。音的な点で気になるところと言えば、確かに私のイメージより少し線が細い。と言うよりは、私はもう少しい音が好き。それとちょっと音像が奥に行きすぎる。でも、そう思っていると、実は今の我が家の音にどんどん近づいてくるわけで、さてどうしたものか。我が家の音はどんなふうに変わるのか、変わらないのか。しかし、なんだかんだ悩んでも結局一番問題なのは、やはりフトコロ、サイフのの問題ですね。お金があれば、いくら買ってもいいわけですが、現実はシビアです。要は38万円で我が家の音はどう変わるのかという問題。ちょっと悩みどころです。

 我が家は「オーディオ革命」だと言いました。それは実は昨年中からすでに、システムの変更が進められているからなのです。昨年末は各社のAVアンプの完成が延び延びになっていたこと、さらに予定していた額よりかなり高額なラインナップ展開になっていたこともあって、ビジュアル系の充実を見送って、先にオーディオ系の充実をする方向に気持ちが切り替わっていたのです。大阪ハイエンドショウでの体験もやはり強い刺激になりました。

 大阪ハイエンドショウで体験したビシッと鮮烈さのある新鮮な音をもっと聴いていたい。そう思えば引っかかるのはやはりAVアンプをプリアンプとして使っている我が家の現状です。そこにはやはり限界があるだろう。きちんとしたオーディオ専用プリアンプでシンプルな構成を目指すのが王道ではないか。少なくとも大阪ハイエンドショウの体験に近づくには、このまではいけないのではないかという思いが頭をめぐりました。しかし、一方で左右の環境が違う我が家では、音響調整できるイコライザーも必需品。パイオニアの自動調整機能MCACCは本当に素晴らしいものだということも教わりました。しかし、オーディオの世界でイコライザーというと限られています。最も安心感があり、信頼がおけるのはアキュフェーズのDG-38。大阪ハイエンドショウでもJBLのDD66000を再生するのに非常に効果的に働いていました。これは1月にDG-48という新製品に入れ替わりますから、この時に買い換えで中古がたくさん出てくる可能性がある。なんなら将来性をかってDG-48にするのも悪くない。アキュフェーズなら長期的に使用することに何の心配もありません。

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2008年1月14日 (月)

レクストのDAC-NS1Sと、私の求める再生について

 ジャズで空間がよい、音色の多彩さがよいということを不思議に思われる人も多いかもしれません。そんな聴き方、音楽評はないだろうと。私も以前は分かりませんでした。強いリズム、強い音を求めてました。リズムは歯切れとパンチ、トランペットは天に駆け上がるような音の爽快感というようなものばかりを気にしてました。もちろん、それはジャズの魅力の大きな要素であって、必要不可欠なものなんですが、どうもそれだけではないなと、このところ思うようになっているのです。

 きっかけはサックスの音色。サックスはリードが木製で、その振動が音になります。あのきらびやかな胴体を見ると間違いやすいですが、サックスは木管楽器なんですね。フルートなどもそう。どうもうちの音はこの木管としての音色、もともとの音の太さや柔らかさ、その音色の微細な変化がちっともとらえられていないんじゃないかと思い始めたことでした。スピーカーの間隔を修正したり、部屋の音響を整えようとしたり、いろいろと試してみました。すると、少しずつ音の柔らかさ、弾力感が出てきました。さらに、濃淡や音色の変化も少しずつ出てくる。ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」にもいろんな響きが入っていることが最近になって分かるようになったのです。これまではロリンズのサックスの音ばかりを聴いていて、音が太いとか、強いとかに気をとられるあまり、その周囲に広い響きがあること、そこでロリンズのサックスが軽やかに歌っていることを知りませんでした。そのことに気がついてから、もっと空間や音色の変化を再生できるようにと思うようになったのです。昨年の1年はそうしたことへのチャレンジに明け暮れた1年でもありました。

 マイルスに話を戻すと、その結果この1年で最も魅力的に見えたアーティストはマイルスなんですね。私はジャズファンですが、マイルスが好きというわけではありませんでした。線が細くて、神経質な感じが私にはあまりあわなかった。音を小出しにしている感じで、もったいぶっているようでもある。力押しのジャズを求めていた耳には、そう聞こえていたわけです。しかし、響きや音色を聞き出すと、マイルスのミュートの魅力的な音色、強弱の微妙なバランス、優しくかつ鋭い響きなどが生き生きとしてきました。レクストさんで聴いた「カインド・オブ・ブルー」もまさにそうしたところが良く出ている。我が家がずっと悩んできたところをすぅーっと当たり前のように再生されていることに気がつきました。さらにリクエストして、当の「サキソフォン・コロッサス」をかけてもらいます。これもイメージ通り。最初のドラム、シンバルを強く聞こうと思うあまりにロリンズのサックスの音が一面的になって抑揚が見えなくなる。この超有名なディスクはこれまでずっと聴いてきました。ワンホーンカルテットで、比較的単純な分かりやすい録音です。だから、ずっとあの直接的な音でいいんだと単純に思っていました。それでいいのかと悩んだ1年だったのに、レクストさんではパッと当たり前にそういう音が出る。「ああ、そうなんだ。こういう音が入っているんだ。サキコロはやっぱりライブなんだ」と納得できる音が出ています。私は、これでいいんだと思うんですね。サキコロはライブなんです。ライブとスタジオ録音の違い。我が家でもようやくこの違いが分かるようになりました。レクストさんのD/Aコンバーターはこれをしっかり表現します。

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2008年1月10日 (木)

年末に、レクストのD/Aコンバータに出会った

「レクスト」さんは「音楽・道楽」でもよく登場するレゾナンスチップを開発したメーカーさんです。我が家はレゾンナスチップの中の「クライオ」という黒いチップを標準として、各機器の電源スイッチやスピーカーに貼ったりしていますし、銀色の「ムーン」、陶器製で限定発売された「スノウ」も電源のヒューズボックスに使わせてもらっています。他にも陶器製の「スクゥエア」はスーパーツィーターの台座となっていたりします。こうしていろいろ使っているんですが、こうしたものはオーディオアクセサリーと言っても、かなり小型。それ自体がものすごい変化をさせるというよりは、機器の働きを助けるというか、補助するような役割のものですね。そうした小さいアクセサリーで有名になった「レクスト」さんですが、ケーブルの開発から始まって、最近は「レクスト・プロ」を立ち上げて本格的なモニタースピーカーを作成したり、CDまで録音したりとどんどんと活動の範囲を広げているところでもあります。そして昨年はNS441Dなる技術を開発して手持ちのCDプレーヤーの調整をはじめたかと思ったら、とうとうD/Aコンバータまで作るようになってしまいました。最初に作られた1号機はネットでも話題というか、以前からレクストさんと親交の厚いマニアの方々が試聴して、あっという間に買われて無くなってしまいました。なので、話題になったのもつかの間で、現物が無くなってしまったわけです。その後、さらに開発を進めて今年後半に無事2号機が発売となったと思った矢先に、今度は付属の電源ケーブルやバランス出力の音の調整をしたとのことで、はや3号機が登場しているというめまぐるしい活躍をしておられます。その都度ネットでも取り上げられて、いろいろな話が聞かれるのですが、「ああ、聴きたい」と思ってもなかなか聴く機会というものがありません。年末に「イケオン」さんでイベントが行われたらしいのですが、おそらく一般のお店では試聴することもまず無理と考えてよいと思います。レクストさんは毎週金曜日に独自の試聴イベントを行っているので、そこで聴くしかチャンスはありません。

 で、やっぱりぜひ聴きたい。今年はCD回帰というか、SACDを再生できる機器メーカーが非常に限られた現状に、製品開発が伸び悩んでいることを反映しているのか、CD専用DACというものが何機種か登場しました。それぞれに、それぞれ独自アプローチを行っていて、特徴があるようですが、このレクストさんのDACもその一つ。NS441Dの内容は分かりませんが、ネット上の評価はなかなか高いようです。

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2008年1月 4日 (金)

菅原正二さんの「サウンド オブ ジャズ」

 今年一番最初の記事は、岩手県一関市にあるジャズ喫茶「ベイシー」の店主菅原正二さんの「サウンド オブ ジャズ」について書こうと決めていました。この本はもともとは「ジャス喫茶「ベイシー」の選択 酒とジムランの日々」として出版されたものの文庫化です。と言うより、「ステレオサウンド」誌に連載されている菅原さんのエッセイを収録したものという方が分かりやすいと思います。私は現在その「ステレオサウンド」誌が大好きで、毎号購入していることもあって、文庫と言っても、あらためて買うつもりはもともとありませんでした。だから、実際の発売は去年の初めでしたが、私が買ったのは11月に入ってからでした。そして、一度読み始めたら止まらなくなってしまいました。
 オーディオという辺境の趣味は分かってもらえるようで、実はなかなか分かってもらえません。まあ、何でも趣味の世界は没頭している当人しかその楽しさはわからないのかもしれませんが、この本を読んでいると素直に、ああここにわかる人がいる、大先輩がいると思えるのです。

 例えば、「ベイシー」で最初のスピーカーを自作するくだりがまず楽しい。部屋の柱を切ってエンクロージャーの支えにしたり、布団を吸音材にしてみたりと、それは破天荒なのだが、「スピーカーの気持ちになって考える」という菅原さんのポリシーはまさにオーディオマニアの心を揺さぶる。「スピーカーの気持ち」を本気で考える人はそんなことまでできるのかっとまず圧倒されてしまう。ひたすら音にのめり込む菅原さんの姿も尊敬に値する。ある日一瞬浮かび上がったコルトレーンの姿とはどんなものだっただろうと想像する。レコードプレーヤーのオイルに悩み、スピーカーケーブルのわずかな長さに音の違いを感じる。激しい音圧の中にさっと飛び込んで音のバランスを把握する。どれもこれも、オーディオマニアならやってそうな出来事だが、実際にそこまで追求する人がいるのかということに感動してしまう。私達もいくつかは経験し、チャレンジし、挫折しているが、菅原さんは全てやり尽くしているかのよう。それが菅原さんの日々の中ににじんでいる。だから、きっとこの方の音はすごいはずだと納得できる。もちろん、マニアの音には好き嫌いがあるわけで、万人が納得できる音があろうはずもない。そうではなくて、菅原さんの熱意のこもった、菅原さんらしい音なんだろうなぁと納得できる。オーディオはそれでいいんじゃないかと思う。
 私も以前はニュートラルな音を目指していた。万能な音。原音に忠実であればどんな音楽も再生できるはずと思う。しかし、これは正しそうで正しくない。万人の音は、結局自分の好きな音、自分がひたりきれる音ではない。自分がひたれない音、感動しない音は楽しくない。そんな単純なことに気がつくのにだいぶかかった。もちろん、バランスは大事。個性と自分勝手はまた違う。結局、オーディオの世界はまだ未熟なもので、正しい音というのはたくさんあるのだ。これまで各メーカーの音をいろいろ聞いて、どれが正しいのか、ニュートラルなのかと考えていた自分がバカだったと気がついた。どのメーカーの人もみんな自分の正しい音を目指しているし、それに間違いはないのだ。それでもみんな個性がある。というか、個性ができる。それを買い、使う私達にも好き嫌いがある。それを否定してもはじまらない。結局自分はどんな音がうれしいんだろうと、自分に素直になれることが大事なんだと気がついた。菅原さんはまさに最初からそういう人だ。だから、エンクロージャーの中に布団があってもいいのだ。プレーヤーはケースのない裸のままでもかまわないし、ケーブルもメーカー品なんかでなくもいい。しかし、レコード針は自分の気に入った音が出るものを見つけるまでいくつでも取り替え続けるし、スピーカーのほんのわずかなズレも気に入らない。自分の思う音に正直なのだ。そこに自分のコルトレーンがいる。自分のベイシーが歌う。そうしたひたむきな人の音が悪かろうはずがないことを、私達は知っているのだ。

 オーディオの話しも楽しいが、多くの人の出会いの話しもまた魅力的だ。オーディオ評論家の菅野沖彦先生がベイシーを訪れたときの話し。岩崎千明さんの豪快な個性。エルビン・ジョーンズの繊細かつ楽しい人柄。そうした出会いもまたオーディオの世界な気がする。オーディオは本来孤独な趣味だけれど、ネットの世界が広がって、多くの人の交流や世界の広がりを感じることができるようなった。楽しみが共有でき、仲間がいることが実感できる。この本にはそうしたたくさんの出会いもまた詰まっている。

 「今は先見の明がある人は多いが、あきらめきれぬ人は希になった」と石山修武さんの言葉(「室内」1990年3月号 ”現代の職人”)を借りて、菅野さんは語る。僕はこの言葉が好きだ。「あきらめきれぬ人」。趣味の世界でも、仕事の世界でも、ものわかりがよくなったのでは何かが終わってしまう。結局こだわりのある人は「あきらめきれぬ人」なのだ。もう一つ、もう少しと思っている人が前に進む。泥臭くて、偏屈で、頭が固い。そういう生き方をしたいと思う。最近周りを見てもそういう人が少なくなった。若い人も、実はみんな利口になった。生きることや仕事のやり方が上手だ。器用でうまい。物事もよく知っている。でも、みんなサラサラしている。それがどうも気に入らない。オーディオもそうだ。どのシステムも平均点は高い。どんな製品でも聴けないような音はなくなった。ノイズだらけの製品なんてひとつもない。だからこそ、最近は高級機にはちゃんと個性があった方がいいと思うようになった。しっかりとした自分の音、信念があった方が音はよい。そうした製品が奏でる音楽は何かしら心に触れるものがある。
 この小さな文庫本はそんなことを教えてくれる。「ステレオサウンド」を読んでいる人はすでに一度は読んだことがあるものばかりかもしれない。最近のエッセイはちょっと理屈っぽくなってきて、私には時に読み切れないものもあるけれど、この頃の文章は心地よい。オーディオっていいなぁ、ジャズって熱いなぁと思える。オーディオの世界で暮らす人には、ぜひ、読んでもらいたいと思った。

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